男鰥な映画−4(ネタバレにご注意)

 

子どもの頃、線引きの文章を読んで作者の気持ちを考えなさい…なんて、テストがあって、

 

えっ読んだままじゃないの?どこに他の意味があるの?なんて思ったりしました。

 

この勉強の重要性は、成長するにつれ痛いほど理解することになるのですが…。

 

たとえば、食器を投げられたり噛みつかれたりしても、本当に嫌われているとは限らないし、

 

むしろ遠慮なく心を開いてくれてると思えば嬉しくもあり、言葉や表情、しぐさや行動、

 

そして書かれた文章(今はメールですね)にも、実は他の意図があるのを洞察するのは、

 

社会に出るためにも大切な勉強だったと実感しています。

 

映画も同じように、出演者のなにげないセリフ一言から、テーブルに置いてあるモノの映像まで、

 

重要なメッセージがこめられているのでは?を前提で、注意深く観るようにしています。

 

 

 

 

 

GODZILLA ゴジラ…… ギャレス・エドワーズ監督

 

ゴジラより少し若い私が初めて出逢ったのは、怖さよりかっこいいなぁ

 

強いなぁというのが印象に残った、お祭り騒ぎで夏休み用の子ども向け

 

プロレス格闘技風の映画でした。最初に初代作品のゴジラを見たら、きっと怖かったし

 

ゴジラに対するイメージも変わっていたでしょう。しかし当時は子どもだから、

 

核に対するテーマもわからず、ドラマの部分はつまらなそうにして、ゴジラ登場で

 

街の模型がよく出来ているなぁとか、おそらく特撮のすごさには感心したのかな。

 

 

 

序盤から日本で大惨事が起きてしまいます。

 

逃げているのは国際学校の小学生。こんな近くに学校があるなんて…

 

富士山が見えるけどジャンジラ?という街。浜岡辺りを連想させますが、

 

原発の形は…マイル風ですし、地名も日本ぽくないのはきっと配慮ですね。

 

 

今回は初代ゴジラを意識した作品ということで、当然核の問題がテーマとして

 

気持ちを重くします。ゴジラ登場から60年、世界情勢も変わっていますし、

 

平和利用で推進された原発も、わが国で大災害をお起こしてしまった後なので、

 

いろんな方面への配慮でしょう、かメッセージは弱かった印象。4人もの脚本家の

 

手を経たのも、きっとその辺が難しかったのでしょう。

 

私は、イギリス人監督が、日本(被爆国なのに原発推進)とアメリカ(最初で最後の

 

原爆投下国)に向けた、核批判をしっかり中心に据えた作品に思えました。

 

もちろん世界の核保有国(原発も含めて)へのメッセージもこめて。

 

それは…

 

 

監督自ら選んだあるコンテストの作品らしいです。まるでゴジラが

 

日本から流れ出る…水のようで、今回の舞台の流れにそったイメージです。

 

日本で災害があったとき、世界はこんな風に見えていたのでしょう。

 

 

日本の浜岡原発あたりを舞台にした地震で大惨事が起きたり、ハワイでは津波がと、

 

さらりと見せてしまうのは、今の日本ではとても映像化に出来ないことなんですが、

 

どこで起こっても不思議のない自然災害です。しかし日本で起こってしまったのに、

 

地震大国で備えが十分と思っていたのに起こってしまったのに、今何をしとるんだと…

 

やっぱり、あちらで核をテーマにしたゴジラの大作が作られ、ヒットしたのは悔しい。

 

被爆国である日本が、大きな自然災害が元とはいえ人災事故を起こしてしまったことも

 

残念ですし、アメリカはこの映画でも躊躇無く、核による解決を図ろうとしています。

 

原発、核兵器が人類滅亡にいたらず、バランスが保たれてきたのは奇跡と思えてきます。

 

しかし現実に怪獣が現れたら、即、潜水艦から核ミサイル発射で退治することに、

 

世界は文句をいえないでしょう。

 

 

 

終始こんな表情のKenさん。映画の世界でも原発事故が起こった

 

後なのでしょうね。世界中の人が観る映画ですから、日本人の代表として、

 

申し訳ないという贖罪の演技に感じてしまいました。

 

 

 

まるでクジラを追っているかのようなシーン。ゴジラの大きいさがわかりますが、

 

実際は泳いでいると尻尾で大きく見えるので、立つと思ったほどではありません。

 

それとも、ゴジラは危険ではないと言うことなのでしょうか。

 

あの空母には芹沢博士が乗っていたと思いますが、

 

軍隊の仲間として退治行くイメージです。この後見失いますが…。

 

 

 

ポスターもいただけません。Kenさんの表情がほんと暗い…

 

続編では是非ともご活躍を祈るばかりです。ゴジラと共に

 

日本を代表して世界のために戦っていただきたいです。

 

 

ゴジラが世界で大ヒットしているのはCGの造りがいいとか、原型に近いと

 

言うだけでなく、核の問題を世界中の人が心配しているのかもしれません。

 

実際ゴジラの登場場面は少なく、前半は男鰥の苦悩する場面で胸が痛いくなり、

 

中国とロシア、日本とアメリカがタッグを組んで宇宙怪獣と戦う

 

ロボット映画のノリで観に行った私は、ガツンとやられました。

 

映画の中では怪獣上陸に逃げ惑う我々ですが、実際は自らが創った怪獣(核)に

 

踏みつぶされないか心配な世界であることを、あらためて認識させられました。

 

 

 

 

 

UP カールじいさんの空飛ぶ家…ピート・ドクター監督

 

 ピクサーのCGアニメは、ストーリーが予想外れの作品ばかりです。

 

もちろん良い方向に裏切ってくれるのですが、本作ほど期待していなかった

 

作品はありません。風船じいさんと東洋人の子ども…。

 

しかもじいさんが主人公。しかし、出だしでカールじいさんの生い立ちが丁寧に描かれ、

 

男鰥になるころには目頭が熱くなり、ビデオでしたらここで一時停止していたかもです。

 

 

出だしからカールじいさんの生い立ちというか、奥さんとの

 

なれそめから別れまでが丁寧に描かれます。これだけで充分ショートムービー

 

として感動するのですが、じいさんになりつつある私は感情移入してしまい

 

いったいどういうテーマの映画か、しばらく判断がつきませんでした。

 

 

忘れ形見もなく、残されたのは二人のアルバムと小さな家…。

 

その後カールじいさんは妻との夢を実現するために奮闘するのがメインの

 

ストーリーですが、そこには孤独な老人の問題、マイノリティーの

 

子どもたちとその親の問題、犬を飼うというペットの問題、絶滅危惧種を守る

 

ということなど、いろいろ考えさせられるテーマが盛り込まれています。

 

カールとエリーには申し訳ないですが、私は子育てという大冒険に

 

挑めたことは幸せだと思いました。まだ終わってはいませんが…。

 

 

 

ゴジラでもそうでしたが、別れのシーンは経験した者からすると

 

逃げ出したくなってしまいます。まさかアニメで…

 

人生の辛いシーンを描くのはむずかしいですが、挑戦してくれて感謝です。

 

奥さんのエリーはこの短いシーンだけですが、別の映画で元気に

 

登場してくれると嬉しいなぁ。最後の最後の一言まで人柄を感じます。

 

 

この映画は身近なとこにも冒険はあることを気づかせてくれます。

 

地元の卓球少年にカモにされそうで、逆カモにするのは楽しいですが、

 

彼らが大きくなって強くなっても相手してくれることは、

 

もっと嬉しいこと。この映画に出逢ってから、身の回りのことを

 

色々考えるきっかけにもなりました。人生は、生きていくこと自体が

 

大冒険だといってるのでしょう。エリーが別れるときにアルバムに

 

書き留めた最後の言葉「楽しかったわ ありがとう 新しい冒険を始めて!

 

愛をこめてエリーより」こんな風に言われたら、

 

最初のカールじいさんのようにぐだぐだしている場合ではないと…!

 

これはシニア向けの、元気が出る最高のアニメ映画です。

 

 

 

原題は「UP」…色々な意味にとらえることが出来るタイトルなんでしょう。

 

じいさんにとっては、エリーの最後の言葉で目覚めたということでしょうか。

 

 

 

 

 

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